フィットプレイス(FITPLACE 24)に関する考察

床に置かれたダンベル スポーツクラブ分析

人気の筋トレ系Youtuberである山澤礼明氏が代表を務める株式会社FIT PLACEが展開するFITPLACE 24。
山澤氏の動画では、出店・売上・利益とも絶好調とのことですが、その強みと弱みについて考察してみました。現状はFITPLACE24が発表している数字しか考察材料がありませんが、下記のように考えられます。

FITPLACE 24の退会率

FITPLACE 24の退会率は1.2%であると書かれています。
https://www.wantedly.com/companies/company_5866103/post_articles/536893

1.2%という数字は、若年会員が多く入退会の流動性が高い24時間型ジムとしては非常に低く、一般的なジムの1/2~1/3くらいの退会率だといえます。

ただFITPLACE 24は、税込3,278円/月の種別は1年契約で、退会しても前払いした会費の返金はありませんし(利用規約 第6条 https://fitplace.jp/terms/)、12ヶ月未満で退会すると違約金(税込13,200円=4ヶ月分の会費相当)が発生しますので、一旦入会したら、利用しなかったとしても、退会しないのではないでしょうか。

「続けるより退会する方が出費が多い」という仕組みですので、多くの人は、「とりあえず12ヶ月経つまで続けておこう」という判断をすると思われます。そして11ヶ月目に退会手続きを忘れてしまうと、さらに12ヶ月間自動継続することになります。

12ヶ月を過ぎれば、退会の違約金は発生しなくなりますが、支払い済みの会費は返金されませんので、再び、「とりあえず12ヶ月経つまで続けておこう」となるかもしれません。退会率1.2%を構成している退会者は、違約金や支払済会費を気にしない金銭的余裕のある人か、試しに単月契約をした人だと思います。

FITPLACE24は、始まって2年目ですので、まだそういうケースは少ないとは思いますが、今後、退会手続きを忘れた人たちによる返金要求が増えてくる可能性があります。規約通りの対応ですし、利用者の自己責任ですが、感情的には受け入れられないでしょう。

声が多ければ、FIT-EASYと同様に、消費者団体が動いて規約改定になるかもしれませんし、Youtubeのコメント欄が荒れると、「山澤氏の動画による集客」という最強の武器が崩壊してしまいますので、沈静化のために何らかの対応を取ると思います。
参考資料: https://cnt.or.jp/topics/post-6994.html

FITPLACE24の強み

山澤氏の動画では、会費、立地、設備などを強みとして挙げられていますが、それらは他社でも似たような物がありますので、真の強みは以下の2点だと考えています。

1.山澤氏のYoutuberとしての集客力

山澤氏の動画による集客を広告宣伝費(チラシ、WEB広告、テレビCM等)に換算すると、おそらく10~20億円/年に相当すると思います。

chocoZAPはもっと多額の費用を実際に使っていると思いますが、chocoZAPがマス広告で無差別にばら撒いているのと違って、FITPLACE24は、ターゲット層に無料で届けることができています。

そして各店は、この莫大な広告宣伝費を、日本全国で常に無料で使っていることになります。実際はフランチャイズのロイヤリティを払っているため完全無料ではありませんが、それとは比較にならない大きさの恩恵でしょう。現状、この無料の広告宣伝ができているのは、FITPLACE24とVALX GYMくらいだと思います。

VALX GYMがFC事業に本気を出したら、同様の状況になるのかもしれませんが、山本義徳氏に全力で宣伝してもらう必要があるため、山本氏にその気が無いと難しい気がします。

2.早期黒字化する会費制度

「税別2,980円で12ヶ月退会できない」という、入会しやすく退会しにくい会費制度が、絶妙だと思います。

Youtubeを見て入会する流動層(若年男性)は、月契約であれば4~6ヶ月で退会してしまうでしょうけれど、この制度があることによって、12ヶ月継続することになります。

また、入会時点で月会費2,980円×12ヶ月+入会金5,000円+施設メンテナンス料5,000円=45,760円の売上が確定します。口座振替ではなくクレジットカードのみですので、未納になることもありません。

山澤氏の持つ強力かつ無料の集客力と、絶妙な会費制度による集金力で、オープン直後からキャッシュフローをロケットスタートできるという点が、FITPLACE24だけが持ち、今のところ誰も真似できていない強みだと考えています。

FITPLACE24の弱み

上で挙げた強みが、そのまま弱みでもあると考えています。

1.山澤氏に依存した集客

仮に山澤氏がFITPLACE24を第三者に売却して事業から完全に離れた場合、FITPLACE24の集客力は大幅に低下しますし、他のジムとの違いが無くなります。

今と同等の集客をするには、かなりの金額の広告宣伝費が必要になるでしょうし、それによって赤字化する可能性もあります。

山澤氏による無料の広告宣伝が、FITPLACE24のビジネスモデルのコアですので、事故、病気、スキャンダル、世間の飽きなどにより、山澤氏のYoutuberとしての人気および露出が落ちてしまうと、ジムもまた衰退していく可能性があります。

山澤氏は色々な人気Youtuberとのコラボ動画をアップしたり、サイヤマン氏をフランチャイジーにしたりと活動されていますが、個人の人気による限界を想定して、広告宣伝力の維持と拡大を図っているのだと思います。

2.消費者団体から指摘を受けそうな会費制度

まだ2年目ですので、解約を忘れたユーザーの絶対数は少ないでしょうけれど、今後徐々に増えると、返金要求されることになります。

FITPLACE24の場合は特に、山澤氏の動画のコメント欄が荒れたり、Googleマップ等の店舗クチコミが荒れたりすると、集客力が低下しますので、FITEASYのように会費制度を変更せざるを得ないと思います。

しかし会費制度を変更すると、現在の高い収益性は失われることになります。

FITPLACE24の収支構造

山澤氏の動画で、投資額が6,000万円~1億円、月間の売上高が800~900万円、月間の利益が数百万円という話があります。(https://youtu.be/0P94CRfgM_g?si=9FspyfTj3cvv-YNI)

好事例を選ばれているでしょうけれど、嘘ではないでしょうから、これを元に考察します。

FITPLACE24もVALX GYMも、「定員のため入会受付停止」になっている店舗がありますが、施設の広さ、マシンの種類、想定される客層から、1,000人程度が定員ではないかと思います。

それ以上多いと、混雑して会員の不満が高まりそうですので。

1,000人と仮定した場合、2,980円×1,000人=298万円ですので、売上高800~900万円には全然届きません。

逆に売上から会員数を算出すると、800万円÷2,980円=2,684人ですが、それだけの会員数がいたら、混雑してトレーニングできません。

おそらく入会時に支払う税抜45,760円(月会費2,980円×12ヶ月+入会金5,000円+施設メンテナンス料5,000円)を月割りせず、入会月の売上として計上しているのではないでしょうか。

800万円÷45,760円=174人ですので、毎月174名の入会があれば、売上高800万円が続くことになります。

月払いの会員やパーソナルトレーニングの売上も考えると、毎月100~150人の入会が続けば、800~900万円の売上高が維持できるかもしれません。

内装投資が5,000万円で10年償却(42万円/月)、マシンが5,000万円で5年リース(90万円/月)、水光熱費が10万円/月、人件費が100万円/月と仮定すると、仮に家賃が300万円/月だとしても、258万円/月の利益が出ます。

数十万円のフランチャイズ料や消耗品、修繕などを考慮しても、このモデルであれば、初年度は1億円の投資額に対して2,000万円くらいの利益が出ます。

単純計算すると、投資利回りが20%ということになりますので、株式や不動産と比べても、かなり高利回りかつ安定だといえます。

この状態がずっと続くのであればの話ですので、年数を経るごとに入会数が自然減して、収益性は低下していくことが予想されます。

FITPLACE24の場合、KPIは会員数・継続率・退会率などではなく、入会数なのでしょう。

他社との比較

1.VALX GYM

VALX GYMも全く同じ会費制度でしたが、今は税抜2,980円から、税抜4,980円に値上げされました。

株式会社レバレッジの只石社長は、「価格は上がってしまいましたが、それに見合う価値と空間とホスピタリティを、会員様に本気でお渡しする」とXに書かれていますが、実際は当初の想定よりも集客できたことが理由ではないかと考えています。

VALX GYMもFITPLACE24と同様に、「定員のため入会受付停止」になっている店舗がいくつかありますが、集客力が高いのであれば、2,980円/月で定員になるより、4,980円/月で定員にならない方が、売上・利益とも上がる可能性が高まります。

また安価に集めた会員が多いと、混雑する上にクラブ内の民度が下がり、悪評が立ってしまいます。

そのような理由から、VALX GYMは会費制度を変更したのではないかと思います。

VALX GYMの場合、入会時に税抜69,760円の売上が立つので、FITPLACE24以上に高収益率のモデルだといえます。

こちらについても、いつまでも集客力が維持されるわけではありませんが。

2.FASTGYM24 L Style

ティップネスの新ブランドラインである「FASTGYM24 L style」も、FITPLACE24と全く同じ会費制度になっています。

会費制度は知的財産権も何もありませんが、アレンジせず全く同じというところに、ティップネスの潔さを感じます。

https://fastgym24.jp/shop/602

FITPLACE24やVALX GYMの成功を見て真似たのかもしれませんが、FASTGYM24は集客にYoutuberではなく、広告宣伝費を使うことになりますので、集客力も利益も、かなり劣ることになるでしょう。

また親会社は日本テレビホールディングスですので、上場企業と同様の消費者対応が必要です。1年未満で解約する会員からの返金請求が多ければ、料金体系を変えることになることが予想されます。

FITPLACE24の今後

山澤氏の人気と露出に依存したビジネスモデルですので、山澤氏がいかにして、Youtuberまたはタレントとしての人気を保ち続けるかに、全てが掛かっていると思います。

仮に山澤氏が、事故、病気、スキャンダルなどで退いたら、他社ブランドでも成立するような立地条件の店舗以外は、閉店していくことになるでしょう。

グッズ販売やイベント開催をするYoutuberは多々いますが、リアル店舗を持ち、自身を広告塔にして、それをFC展開している人は少ないでしょうから、Youtuberとしての新たな在り方だといえます。

芸能人では、名前を貸した飲食店を展開していた人は多くいますが、山澤氏のように直接経営している人は少なそうですし。

Youtuberとしての人気を保ち続けることも容易ではありませんので、Youtuber仲間を取り込んでオーナーにしたり、役員にしたりと、FITPLACE24として広告宣伝の維持を図っていくのではないでしょうか。

有名になればなるほど、悪い人が近付いてくるでしょうし、週刊文春などの週刊誌や暴露系Youtuberなどがスキャンダルを狙うでしょうから、そういう人たちに足元を掬われて全店の業績が悪化するリスクも、他のジム経営者に比べ格段に高いといえます。

現在の収益力を生み出している会費制度については、いつか指摘が入って変えることになるでしょうから、その時点から収益性が低下します。

また定員がボトルネックになっていることから、VALX GYMのように値上げをして、会員数と売上のバランスを取る必要も出てくるでしょう。

以上を踏まえると、2024~2025年は現在の好調が続くでしょうけれど、会費制度が変更になることで収益力が低下し、Youtuberとしての露出が自然減することで集客力が落ち、2026年頃からは普通のジムに近付き、徐々に出店が減り、2030年頃から、いくつかの不採算店舗が賃貸借期間満了により閉店するのではないかと思われます。

競合企業ですので、FITPLACE24の存在は脅威ですが、山澤氏は好きで動画を見ておりますので、頑張って欲しいけれど頑張って欲しくないという、複雑な心境です。