各社の2023年3月期 第2四半期の決算発表が始まりました。
株式会社イトマンスイミングスクール(株式会社ナガセ)が2022年10月20日に発表したため、まずはイトマンスイミングの業績から分析していきます。
【他社の業績分析】
・ホリデイスポーツクラブの業績
・メガロスの業績分析
イトマンスイミングスクールの歴史
イトマンスイミングスクールは、イトマン株式会社の子会社として発祥し、その後、イトマン株式会社の不祥事等もあり、東進ハイスクールを展開する株式会社ナガセの傘下に入りました。
スイミングスクールが主業の会社としては、当時、日本最大規模でしたが、2007年にフランチャイズ契約の条件変更で43店舗がグループを離脱し、売上規模でジェイエスエスに抜かれる形になりました。
しかし2022年に、ナガセが株式会社ブリヂストンからブリヂストンスポーツアリーナ株式会社の全株式を取得し、株式会社イトマンスポーツスクールとしたため、会社としては2社に分かれるものの、イトマンスイミングスクールとしてはジェイエスエスを抜き再び最大規模となりました。
イトマンスイミングスクールの業績
イトマンスイミングスクール自体は上場企業ではないため、業績が公開されておらず、株式会社ナガセの決算書から読み取るしかありません。
ナガセの決算書には売上とセグメント利益(営業利益に相当)しか記載されていないため、この数字を読み解くことになります。
売上高
新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が始まった2020年度は売上が前年比40%減に落ち込みましたが、これはイトマンスイミングに限ったことではないため、避けようがありません。
大人を対象としたスポーツクラブは、現在も業績が低迷していますが、子供を対象としたイトマンスイミングは、2021年度には業績がある程度戻っています。2022年は4月にブリヂストンスポーツアリーナ(2020年12月期売上 21億円)の全株式を取得したため、そのぶんの売上が加算され、コロナ前より大きくなっています。
営業利益
コロナ前は4.28億円(営業利益率11.5%)の営業利益が出ていたイトマンですが、コロナの影響が大きい2020年度・2021年度は、営業利益ベースで赤字に陥っています。
2020年度は、コロナによる営業停止中の固定費(家賃・人件費等)を特別損失(営業利益より下)として▲4.7億円計上しているため、純損失としては▲5億円程度であろうと思われます。2021年度は、特別損失の計上がないため、純損失も▲1億円程度でしょう。
2022年度は世間がコロナに慣れてきたこともあり、コロナ前には至りませんが、利益としては回復傾向にあります。
営業利益率
ブリヂストンスポーツアリーナをM&Aしてコロナ前より売上高を増やしたイトマンですが、利益率としてはコロナ前の半分になっています。
今後の予想
コロナ禍における赤字から脱し、ブリヂストンスポーツアリーナをM&Aして売上も増やしたことで、イトマンスイミングはダメージからの回復と、将来に向けた成長を成し遂げているように見えます。
スイミングスクールビジネスは、安定なサブスクリプションビジネスであるため、平常時であれば大崩れすることはありませんが、気になる点としては、旧ブリヂストンスポーツアリーナ(現イトマンスポーツスクール)のマイナス部分です。
好業績であれば売却されることはありませんので、売上が21億円あっても、利益が出ていなかった可能性があります。
旧ブリヂストンスポーツアリーナ(現イトマンスポーツスクール)は、フィットネスやテニスといった、イトマンが得意とするスイミング以外の事業比率が高いため、これらの事業をどのようにマネジメントしていくかが、旧ブリヂストンスポーツアリーナ(現イトマンスポーツスクール)の収益改善において、重要なポイントとなります。
旧ブリヂストンスポーツアリーナ(現イトマンスポーツスクール)のM&Aにより、コロナ前に比べて増収増益となるのか、増収減益となるのか、今後のPMI(Post Merger Integration)が興味深いですね。特にフィットネス部門(総合スポーツクラブ業態)は、コロナ禍においては、上手くいっている企業がいないため、赤字部門から黒字部門への転換が求められます。
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