chocozap(ちょこざっぷ)がフィットネス業界を変える!
RIZAPが始めた格安&小型の24時間ジム「chocozap(ちょこざっぷ)」。
日本のフィットネス業界を、利用側にとっては良く、提供側に取っては悪く変える最強のプレイヤーが出てきたといえます。
この記事では、chocozapの強み・弱みと今後のフィットネス業界について考察していきます。
chocozapの出店・投資計画については、別記事「chocozapの出店・投資計画」に記載。
ちょこざっぷの特徴
chocozapは他社のジムと何が違うのでしょうか。
面積が小さい
Anytime FitnessやFIT-EASYなどのマイクロジム※が70~100坪を必要とするのに対し、chocozapは30~50坪と、非常に小さい面積になっています。
※ マイクロジム: プールやスタジオが無く、ジムに特化した店舗。24時間営業でフリーウェイトが充実していることが多い。
この面積ではマシンの数や種類を増やすことは難しいですが、chocozapは、トレッドミル※やバイクなどの有酸素運動マシンを一般的なマイクロジムの半分の3台程度、筋力トレーニングマシンも半分の6台程度、フリーウェイト系は無しといった大胆な割り切りをしています。またアクトスWill_Gなどと同様に、ロッカールームやシャワールームを設置していません。
※ トレッドミル: 一般的にはランニングマシンと呼ばれるマシンの業界呼び
コロナの影響もあり、30~50坪の物件は、飲食店や事務所の跡地として数多く出回っており、chocozapが掲げる2025年で2,000店舗という目標において、このサイズ感は重要な要素となっています。居抜きであれば、賃料が20万円/月以下の物件も多く見つかるはずです。
月会費が安い
chocozapの月会費は、税抜2,980円(税込3,278円)と非常に安く、大手では最安値のFIT365と同額となっています。また総額表示が義務化された現在も、あえて税抜価格との併記を用いていることから、2,980円という数字へのこだわりが推察されます。RIZAPほどの大手ですので、価格受容性調査などを行い、この価格が収益性と会員数のバランスにおいて、ベストであるという判断をしたのでしょう。
マイクロジムの運営において、最も大きなコストは賃料ですが、前述のように面積が小さい物件は流通量が多く安価に借りられます。また、賃料の次に大きい人件費についても、アプリで入退会や使い方説明を完結し常駐スタッフを置いていません。大きな固定費を廃しローコスト運営に徹することで、ちょこざっぷは安価な会費を実現しています。おそらく200~300人の会員数で損益分岐点を超えるのではないでしょうか。(通常のマイクロジムは500~700人程度が必要)
体組成計とヘルスウォッチを全員にプレゼント
chocozapは、入会者に体組成計とヘルススウォッチをプレゼントしています。このプレゼントに年間40億円使うとのことですので、200店舗で割っても1店舗あたり2,000万円/年です。1店舗あたりの利益額が2,000万円を超えるとは思えませんので、40億円使ったら、このプレゼント経費だけで赤字になってしまいます。インパクトのある販促で注目を集めるという戦略かもしれませんが、他社には真似のできない、さすがRIZAPグループという感じです。
200店舗が100人/月の入会者を獲得しても、全店で240,000人/年の入会者ですので、プレゼント原価を4,000円/人と仮定しても、年間12億円にしかなりません。おそらく40億円を使い切ることはないでしょうね。
セルフエステも使い放題
マイクロジムとセルフエステ※という組み合わせは、他社でも前例がありますが、税込3,278円で併設しているという店舗は、おそらくchocozapだけでしょう。
※ セルフエステ: エステティシャンが付かず、自分で施術する機械が置かれた個室
エステの機械はトレッドミル1台より少し高いくらいですので、「ジムもエステも使える」というお得感の演出としては、大したコストではないという判断なのでしょう。トレッドミルを1台増やしても会員は増えませんが、エステの機械を1台入れれば、新たなセグメントにアプローチできる可能性もありますので。
chocozapの強み
原価の低さ
chocozapは下記の内容で、他社の従来型ジムより大きな原価低減を実現しています。結果として会費が安くても利益が出やすい体質になります。
賃料が安い
30~50坪と小型で数が出回る物件に出店するため、賃料を安く抑えられます。
人件費が安い
常駐スタッフが居らず、手続きは全てアプリとウェブで完結するため、人件費を抑えることができます。
初期投資が安い
安価なモデルを自社用に開発し、中国で生産しているそうです。種類と台数が少ないため、少ない費用で開業することができます。シャワーやロッカールームが無く、ジム自体が狭いため、空調や照明も含め、改装費も低くなります。
会費の安さ
税込3,278円という、大手24時間ジムとしては最安値の会費となっているため、利用頻度が低い人、あまりお金を掛けたくないという人などのライトユーザーを取り込める可能性があります。
会費が安いと売上は低くなりますが、それ以上に原価が低いため、ある程度の利益は出せるでしょう。
プロモーション力
chocozapの最大の強みは、RIZAPが持つ知名度だといえます。インパクトのあるTVCM、莫大な広告宣伝費(普通のジムやスポーツクラブはTVCMを打ったら赤字になる)、急速なM&Aによる成長と業績悪化など、良くも悪くも露出の多さで、老若男女問わず、ほんとどの日本人がRIZAPを知っているでしょう。大手も含め、普通のジムやスポーツクラブは、興味のある人以外はほとんど名前を憶えられていませんが……。
松平健氏を起用したプロモーションも、何年分かの利益が吹き飛んでしまいますので、普通のジムやスポーツクラブでは考えられません。RIZAPグループ全体の収支やブランディングも兼ねているのでしょうね。
chocozapの弱み
ここまで、chocozapの強みについて書いてきましたが、chocozapにも弱みはあります。ここからは弱みについて書いていきます。
安くても入会しない
これからジムを探す人にとって、税込3,278円/月という安さは魅力的です。しかしジムに行く気の無い人は、安くても無料でも行きません。「安ければ利用したい」というセグメントを掘り起こすことはできますが、市場においてある程度限られます。
またchocozapの拡大を受けて、模倣店舗の増加、マイクロジム間の価格競争などが激化する可能性があります。無人ジム業態は差別化が難しいため、価格競争に陥ると、初期費用の割引かプレゼントを増やすくらいしか、できることがなくなります。
ジムが狭い
ジムの狭さは賃料の安さと物件の多さでは有利ですが、同時利用できる人数が限られます。コロナを経験した今となっては、混んでいる感があるだけで、何となく使いにくくなるでしょう。また狭いジムは他の利用者の嫌な部分がより気になってしまいます(声が大きい、汗をこぼす、体臭が強い、香水が強い、グループで占拠する etc.)。
入会が良い店舗でも、ある程度の会員数で頭打ちになってしまう可能性があります。
マシンが弱い
chocozapは安価なマシンを使っているため、ウェイトの重量がある程度限定されます。ライトユーザーは問題ないかもしれませんが、しっかりトレーニングしたい人には物足りません。また種類も限られるため、他のマイクロジムを利用している顧客が乗り換えることは、あまりないと思われます。
トレッドミルだけ使っているような人は、乗り換えた方がお得ですが。
スタッフに聞けない
chocozapは入退会手続きや使い方説明も含め、人ではなくアプリで行う形にしています(オープン時はスタッフを置いているかもしれません)。アプリというのは、理解力が高く使いこなせる人には便利ですが、chocozapのターゲット層がアプリで満足するかは疑問です。
Anytime FitnessやFIT-EASYのターゲット層であれば、アプリで十分だと思います。実際、PUMP UPなどは、施設見学もアプリで完結できるようになっています。しかし、chocozapのターゲット層は、高齢者を含むライトユーザーや未経験者でしょうから、人ではなくアプリで対応という時点で離脱者を出してしまうかもしれません。
プレゼントが継続に寄与しない
体組成計とヘルスウォッチの入会者プレゼントを実施していますが、体組成計+ヘルスウォッチ+アプリで健康管理できる人が、果たしてどれくらいいるでしょうか?それでダイエットできる人なら、すでに結果を出せているはずです。
プレゼントをもらってすぐに退会という顧客生涯価値が低い会員が多いと、chocozapは広告宣伝費と販売促進費のわりに売上が小さく利益が出ないという体質になってしまいます。
入会者プレゼントは今後、継続期間などの条件が付くか、来年で終了することになるのではないでしょうか。
今後の予想
chocozapの登場によって、「小型&格安」という業態に注目が集まりました。Anytime Fitnessがそうであったように、今後、chocozapの業態を模倣する企業、それをFC展開する企業が増え、日本のマイクロジム(小型&格安)は価格競争が激化していくことが予想されます。
マイクロジムの主な原価は経費は、賃料、減価償却費、マシンリース料、水光熱費、人件費などとなっています。省人・無人化して人件費を減らす、シャワーを廃止して水光熱費を減らすなどは可能ですが、他の経費を減らすことは困難です。
chocozapは無人かつシャワールーム無しですので、人件費も水光熱費も減らすことはできません。すでにコストを最も切り詰めた状態でスタートしていますので、予定より集客できない、店舗を増やす前に競合が増えたなどの状況になると、2025年度までに2,000店舗という目標を達成できずに終わるかもしれません。
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